演算子のゼータ函数
多重対数函数の話の中でHurwitzのゼータ函数 の紹介(というかWikipediaのリンクを貼っただけ)をした。ゼータ函数と言ってもいろいろな表示方法があったり、バリエーションがあったりする(というのをわりと最近知った)。その中に演算子のゼータ函数というのもある。ということでこれまで同様まずはWikipediaのリンクを貼る。ゼータ函数 (作用素) - Wikipedia(Zeta function (operator) - Wikipedia)。今回は日英ともに内容はほぼ変わらない。
ゼータ函数というと普通
\begin{align} \zeta(s) = \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^s} \end{align}
を思い出すと思う。それに対して演算子 のゼータ函数というのはリンク先の式を見ると
\begin{align} \zeta_\mathcal{O}(s) = \mathrm{tr}\, \mathcal{O}^{-s} \end{align}
と書かれている。トレースで書いたままだとイメージが持ちづらいときは、例えば固有値で展開すると対応が見やすくなると思う。つまり演算子 の固有値の集合が とすると
\begin{align} \zeta_\mathcal{O}(s)=\sum_{n,k} \frac{1}{\lambda_{n,k}^s} \end{align}
と書き換えられる。この和は固有値を例えば値の小さい順に番号 を振って、縮退度 も込みで順に並べるものとする。ただし自分も詳しいことはよくわからないのでイメージしてるのは離散的な固有値を持つときだけである。この形で書いていると元のゼータ函数の正の整数が固有値を指定する正の整数に置き換えられるものだと見ることができる。
またWikipediaで興味深い事が書かれていて、それはこの演算子のゼータ函数が汎関数行列式を定義することに使われる、ということである。場の量子論を扱ってると行列式 の中に微分演算子などが入ってるものが出てきたりする。そのとき使われるのがゼータ函数の微分された量である。
\begin{align} \left. \frac{\mathrm{d} \zeta_\mathcal{O} (s)}{\mathrm{d} s}\right|_{s=0} = - \left. \mathrm{tr}\, \mathcal{O}^{-s} \ln \mathcal{O}\right|_{s=0} = - \mathrm{tr}\,\ln \mathcal{O} = - \ln \mathrm{det} \mathcal{O}. \end{align}
演算子のゼータ函数のガンマ函数を用いた別の表示も紹介しておく。それは
\begin{align} \zeta_\mathcal{O} (s) = \frac{1}{\Gamma(s)} \mathrm{tr} \int_0^\infty \mathrm{d} t \, t^{s-1} e^{-t \mathcal{O}} \end{align}
という表示である。積分変数を とすると形式的に最初に紹介した形に戻る。
\begin{align} \zeta_\mathcal{O} (s) = \frac{1}{\Gamma(s)} \mathrm{tr} \int_0^\infty \mathcal{O}^{-1}\mathrm{d} x\, \mathcal{O}^{1-s} x^{s-1} e^{- x} = \mathrm{tr}\, \mathcal{O}^{-s}. \end{align}
ここまで述べてなかったがガンマ函数というのは
\begin{align} \Gamma(x) = \int_0^\infty \mathrm{d} t \, t^{x-1} e^{-t} \end{align}
で定義される函数である。こちらもWikipediaのリンクガンマ関数 - Wikipedia(Gamma function - Wikipedia)である。
述べる順序が逆かもしれないが、普通のゼータ函数は
\begin{align} \zeta(s) = \frac{1}{\Gamma(s)} \sum_{n=1}^\infty \int_0^\infty \mathrm{d}t\, t^{s-1} e^{-nt} \end{align}
と書ける。