phys-aのブログ

物理に関することちょこちょこまとめられたらな、と

周期的な強制振動(減衰項無し)

強制振動は単振動の方程式  m \ddot{x} = - k x に外力に相当する項を加えた方程式で表わされる。ここでは周期的な外力として  f\, \sin \Omega t を加えることにする。いつも通り周波数を  \omega= \sqrt{\frac{k}{m}} と置いて、運動方程式を簡略化するために  s=\omega t のように時間を無次元化し、それに合わせて外力の係数を  X=\frac{f}{m\omega^2} 、周波数を  \alpha =\frac{\Omega}{\omega}, (\omega,\Omega \gt 0) と置く。考える運動方程式

\begin{equation} \ddot{x} + x = X \sin \alpha s \end{equation}

と書ける。ここでのドットは  s での微分を表わすことにする。

 

ここでは愚直に  \alpha が充分に小さい(  \alpha \ll 1 )と仮定して順次次数を上げていく戦略を取ってみる。これは強制振動の周期  \Omega が固有周 \omega より充分に短くするということ、つまり小刻みに外力を与えることを意味する。ブランコが揺れてる時にジタバタしてるイメージすれば良いと思う。

 

まずは  \alpha の1次までを見る。つまり  \ddot{x} + x = X \alpha s を解けばよく、これはさらに2階微分すると  \ddddot{x} + \ddot{x} = 0 となることからカーネルを考えれば定数  A, \delta に対して  \ddot{x} = A \sin(s+\delta) が得られる。単純に積分して元の微分方程式に代入してやると

\begin{equation} x = A \sin(s+\delta) + X\alpha s \end{equation}

が解となる。

次に  \alpha の3次まで見る*1 \ddot{x} + x = X \left( \alpha s - \frac{1}{3!}(\alpha s)^3\right) を解く事になる。これをさらに4階微分すると  x^{(6)} + x^{(4)} = 0 *2が得られるので4階微分 x^{(4)} = A \sin(s+\delta) となり、再び積分して元の微分方程式に代入してやると

\begin{equation} x = A \sin(s+\delta) + X\left( \left( 1+\alpha^2\right) \alpha s - \frac{1}{3!}(\alpha s)^3 \right)  \end{equation}

が得られる。

同様に5次、7次と見ていけば次数を上げるほどに良い近似式が得られる。一方で  \alpha が充分小さいと仮定したままでは強制振動の周期性が見えないままである。

 

ここでやってることはいわゆる摂動展開と言われるものである。摂動パラメータ  \alpha が充分小さいものとしてその冪級数で展開してその近傍での挙動を見る、という戦略である。線形な微分方程式なら一般的な解法が存在するので厳密解が求まるが、今回のような非線形微分方程式の場合は一般的な解法が存在しない。したがって順次次数を上げながらパラメータで展開していくことで予測できる範囲を広げていこう、ということである。

ただしパラメータが大きくなるとこの戦略は破綻してしまうので、この戦略ではパラメータが十分小さいようなローカルな情報は分かるが解の周期性のようなグローバルな情報が分からない。

 

このままでは埒が明かないのでとりあえずこれまでの計算結果に照らしあわせて解を以下のように仮定してみる。まずはカーネルの部分は3次まで考えても特に変わりがなかったのでそのままにして、後ろの項は周期は変わらないものとして  \sin\alpha s に比例すると仮定する。またその係数は s を含まないものとする。つまり  x = A \sin(s+\delta) + \beta X \sin\alpha s と仮定してみる。これを微分方程式に代入すると

\begin{equation} \beta = \frac{1}{1-\alpha^2} \end{equation}

が得られる。つまり

\begin{equation} x = A \sin(s+\delta) + \frac{X}{1-\alpha^2} \sin\alpha s \end{equation}

が解として得られる。逆に  \alpha=0 近傍で展開すれば上記の近似式と一致することが確認できる。またこの解の形から  \alpha=1特異点になっているが分かる。物理的には固有周期と同じ周期で外力を与えることを意味する。加えて摂動展開では  0 \lt \alpha \lt 1 の範囲のみ有効だったがこの式では  \alpha \gt 1 でも有効である。

 

先述の通りこの解には1が代入できないので元の微分方程式に戻って代入してやると

\begin{equation} \ddot{x}+x=X \sin s \end{equation}

である。この微分方程式でのカーネルは上で既に書いてあるように  A\sin (s+\delta) で表わすことができる。ここで注目するのは非斉次項とこの斉次式での解とは独立になってないことである。なんとなく係数の A をいじれば解けてしまいそうに思えるのでここで改めてこの解を  A \sin s + B \cos s のようにバラしてやって  A s の式と見なおして改めて微分方程式に代入してやると

\begin{equation} \ddot{x}+x = \ddot{A} \sin s + 2\dot{A} \cos s \neq X \sin s \end{equation}

となり、これは失敗。次に  B s の式と見なおして計算すると今回は成功してカーネルの係数の数を保つように書いてやると  B = B^\prime - \frac{s}{2}X が得られる。改めてカーネルに属する方を1つの項にまとめた表記だと

\begin{equation} x = A \sin(s+\delta) - \frac{s X}{2} \cos s \end{equation}

 \alpha=1 での解ということになる。この解法は定数変化法と呼ばれるものである。

 

まとめると減衰項無しの周期的な強制振動では固有周期と強制振動の周期が一致しない時はその差でうなりが生じ、一致するときは振幅が時間に比例して増加する。

*1:2次を飛ばした理由は強制振動がサイン函数だから。

*2:冪の (n) はn階微分の略記とする。