phys-aのブログ

物理に関することちょこちょこまとめられたらな、と

落体の運動方程式(ものすごく簡単な非線形微分方程式)

今まで扱ってきた線形微分方程式は斉次線形微分方程式とも呼ばれるものである。シンボリックに書くと、パラメータ  t を含む変数  x に対して

\begin{align} L[a_0, a_1, \dots, a_n] = a_0 + a_1 \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} t} + a_2 \frac{\mathrm{d^2}}{\mathrm{d} t^2} + \cdots + a_n \frac{\mathrm{d^n}}{\mathrm{d} t^n} \end{align}

で定義される微分作用素  L[a_0, \dots, a_n] を作用させた  L[ a_0,\dots,a_n] \, x =0 の形で書ける微分方程式が斉次線形微分方程式と呼ばれる。ここで  a_i t函数あるいは定数。この微分方程式を解くことは線形代数で扱った行列の核(カーネル)を求めると言い直しても良い。

一方で上記のように書けない微分方程式、たとえば  L[ a_0,\dots,a_n] \, x \neq 0 の形になる微分方程式は非斉次微分方程式と呼ばれ、  a_i x函数だったり、あるいはもはや  (\mathrm{d}x/\mathrm{d}t)^2 を含んで  L x の形で書けない場合は非線形微分方程式と呼ばれる。斉次/非斉次(あるいは同次/非同次)と線形/非線形との分類がある。非斉次であれば非線形だが斉次だからといって線形とは限らない。線形でないと一般的な解法は存在しないことが多くなる。というのも名前からも分かるようにまず線形和が作れない。

 

ここでは簡単な例としてまず定重力場のもとでの運動方程式を考える。それは高校物理でも扱われていて

\begin{equation} m \ddot{x} = -m g \end{equation}

と書ける。  m, g をそれぞれ質量と重力加速度とする。また文字の上のドット1コにつき  t での1階微分を表わす。これが一番最初に出てくる非斉次微分方程式かもしれない。これは定数なのですぐ何も考えず2階積分してしまえば

\begin{align} x = -\frac{1}{2} g t^2 + v_0 t + x_0 \end{align}

のように解けてしまう。ただし  v_0, x_0 はそれぞれ初期速度、初期位置をイメージした積分定数とする。

非斉次といえども斉次での解も必要になる。境界条件が決まらない限り非斉次微分方程式の解は斉次微分方程式の解の分だけ不定性をもつ。なのでちょっとここで線形微分方程式の考え方を試してみる。つまり x=\exp \lambda t の仮定のもと斉次微分方程式  \ddot{x}=0 にして考えてみる。もちろん  \lambda=0 なのでまずは  x=x_0 となる。これは重解なので前回同様  \dot{x} = v_0 もの解も元の方程式の解のひとつになる。したがって斉次微分方程式  \ddot{x}=0 を線形微分方程式のパターンで解けば

\begin{equation} x = v_0 t + x_0 \end{equation}

が得られる*1。したがって最初に何も考えず2階積分した時に得られる解の2項目3項目は斉次方程式の解であることが分かる。もちろんそれを表わしているのが2つの積分定数  x_0, v_0 である。言い換えると問題の2階微分方程式カーネル(の要素)を表わしている。

それでは最初に示した解の1項目はどうやって求めるかを考える。ここで元の非斉次微分方程式をもう1回微分してみる。すると斉次3階微分方程式  \dddot{x} =0 が得られる。これを線形微分方程式として先ほどと同じ手順で計算すると

\begin{equation} x=a_0 x^2 + v_0 t + x_0 \end{equation}

が得られる。これがこの微分方程式カーネル(の要素)を表わしている。

考えている非斉次微分方程式に戻ると。このカーネルの要素から係数を合わせれば  a_0 = -\frac{1}{2}g のように欲しい解が得られる。

 

以上のように非斉次でも定数というものすごく簡単な場合ではあるが非斉次2階微分方程式を3階線形微分方程式と2階線形微分方程式とのカーネルを比較することで線形微分方程式の解法パターンに含まれる形として解くことが出来た*2

*1:もちろん積分定数は任意なのでどんな記号を使ってもいいがイメージしやすくするために共通の記号を使っている。

*2:定数に限らずパラメータ、ここで言うと  t 、の多項式であれば簡単な部類に入るのでは

2階線形微分方程式(無次元化した解とそのグラフ)

2階微分方程式を解くうえでパラメータが特定の関係を満たすときのみ臨界減衰現象を起こす。その大雑把な場合分けは前回の記事で扱った。今回は無次元になるように規格化することで解の形を整えてたうえで3パターンに場合分けしたものを比較する。併せてグラフにして目に見えるようにする。

 

共通して初期位置と初期速度とをそれぞれ  x_0 v_0 とおく。すると前回解いた2階線形微分方程式の解は以下の3つの形に書ける*1。記号の定義などは2階線形微分方程式(減衰と振動) - phys-aのブログ参照。

\begin{align} x &= \left( x_0 \sin \Omega_\mu t + \frac{v_0 + x_0 \mu }{\Omega_\mu} \sin \Omega_\mu t \right) e^{-\mu t} \qquad (\omega > \mu), \\ x &= \left( x_0 + \left( x_0 \mu + v_0 \right) t \right) e^{-\mu t} \qquad ( \omega = \mu), \\ x &=  x_0 \frac{ \Lambda_+ e^{-\Lambda_- t} - \Lambda_- e^{- \Lambda_+ t} }{ \Lambda_+ - \Lambda_-} + v_0 \frac{ e^{-\Lambda_- t} - e^{- \Lambda_+ t} }{ \Lambda_+ - \Lambda_-}  \qquad ( \omega < \mu). \end{align}

ここで初期位置  x_0 \gt 0 として無次元化された位置  \chi = \frac{x}{x_0} を定義する*2。同様に無次元化された時間  s = \mu t と無次元化された速度  \nu = \frac{v_0}{x_0 \mu} とを定義する。そして

\begin{align} \alpha = \sqrt{ \left(\frac{\omega}{\mu}\right)^2 -1} \mbox{ for } \omega > \mu , \quad \beta = \sqrt{ 1-\left(\frac{\omega}{\mu}\right)^2} \mbox{ for } \omega < \mu \end{align}

なる無次元量  \alpha, \beta を導入する。この2つの無次元量を定義するパラメータの領域が違うことに注意する。また

\begin{equation} \alpha > 0, \qquad 0 < \beta < 1 \end{equation}

を満たす。この無次元量を使うことで3つの解は

\begin{align} \chi & = \left( \cos \alpha s + \frac{\nu + 1}{\alpha} \sin \alpha s \right) e^{-s} \qquad (\omega > \mu), \\ \chi &= \left( 1 + \left( \nu + 1 \right) s \right) e^{-s} \qquad ( \omega = \mu), \\ \chi &= \left( \mathrm{cos h}\, \beta s + \frac{\nu + 1}{\beta} \mathrm{sin h}\, \beta s \right) e^{-s} \qquad ( \omega < \mu). \end{align}

これで方程式の解を見通しの良い形にできたことになる。ここで  \alpha が十分に小さいならば

\begin{align} \chi & = \left( \cos \alpha s + \frac{\nu + 1}{\alpha} \sin \alpha s \right) e^{-s} \\ & =  \left( 1 + O(\alpha^2) + \frac{\nu + 1}{\alpha} \left( \alpha s  + O(\alpha^3) \right) \right) e^{-s} \\ &= \left( 1 + \left( \nu + 1 \right) s \right) e^{-s} + O(\alpha^2) \end{align}

のように  \omega= \mu での計算結果を再現できる。  \beta でも同様に確認できる。

 

グラフを以下に示す。  \alpha = \pi, \beta=0.5 で固定して無次元化した速度  \nu のみ変える。1つ目は  \nu=-2 、2つ目は  \nu = -1 、3つ目は  \nu =0 、4つ目は  \nu = 0.5 にした。ふたつ目までは原点方向へ初期速度があって、3つ目は初期速度ゼロ、4つ目は原点方向とは逆方向への初期速度がある。

紫が  \omega\gt\mu 、緑が  \omega=\mu 、赤が  \omega\lt\mu を表わしている。グラフを見ると  \omega=\mu の方が  \omega\lt\mu よりも減衰が早いことが分かる。

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*1:ここで  \Lambda_\pm で書いてるのは見通しを悪くしてることが無次元化する過程で分かったがそのままの形でかいた。

*2:初期位置の原点からのズレを正として考えると不自然な仮定ではない。ただし初期位置が原点の場合を除く点は注意。

2階線形微分方程式(減衰と振動)

力学で扱う運動方程式で単純な2階線形微分方程式について少し述べる。 x, t はそれぞれ位置と時間、  m \gt 0, K \geq 0, k \geq 0 は順に質量、空気抵抗係数(粘性係数)、バネ係数とする。運動方程式

\begin{align} m \frac{\mathrm{d}^2 x}{\mathrm{d} t^2} = - K \frac{\mathrm{d} x}{\mathrm{d} t} - k x  \end{align}

のように書ける。ここで各係数は定数とする。この方程式で想定されるシチュエーションとしては、質点にバネを付けて適当に伸ばしたところで手を離し、以降は触れずに振動させるが、その振動する質点の速度に比例して空気抵抗を受ける、というものが考えられる。以降は係数を整理した

\begin{align} \frac{\mathrm{d}^2 x}{\mathrm{d} t^2}  + 2\mu \frac{\mathrm{d} x}{\mathrm{d} t} + \omega^2 x =0 \end{align}

で話を進める。ただし  \mu = \frac{K}{2m}, \omega = \sqrt{\frac{k}{m}} とする。

 

2線形微分方程式なので階数と同じ数である2コの独立解が存在して、その線形結合で任意の解を構成でき、かつ完全直交系の基底 \{ e^{in\lambda t}\}_{n\in\mathbb{Z} } で展開すれば(ここでは  e^{i\lambda t} を代入すると)微分方程式は代数方程式に帰着できることを利用すると

\begin{align} \lambda^2  - 2i\mu \lambda - \omega^2 =0 \end{align}

という2次方程式を解けば良いことが分かる 。一般解は

\begin{equation} \lambda_\pm = i\mu \pm \sqrt{ -\mu^2 + \omega^2} \end{equation}

となる。ここで場合分けすることで方程式で描かれる描像が変わる。

 

その1:  \omega \gt \mu (空気抵抗より振動が支配的)

このときは代数方程式の解が

\begin{equation} \lambda_\pm = i \mu \pm \sqrt{\omega^2 - \mu^2} \end{equation}

なので  \Omega_\mu = \sqrt{\omega^2 - \mu^2} \gt 0 とおくと

\begin{equation} x =  e^{-\mu t} \left( A e^{i \Omega_\mu t} + B e^{-i \Omega_\mu t}\right) \end{equation}

が得られる。周波数  \Omega_\mu で振動するが振幅が  e^{-\mu t} に従って減衰していく。減衰振動と言う。

 

その2:  \omega \lt \mu (振動よりも空気抵抗が支配的)

このときは代数方程式の解が

\begin{equation} \lambda_\pm = i \left( \mu \pm \sqrt{\mu^2 - \omega^2} \right) = i \Lambda_\pm \end{equation}

なので  ( 0 \lt \Lambda_- \lt \mu \lt \Lambda_+)

\begin{equation} x =  A e^{-\Lambda_+ t} + B e^{- \Lambda_- t} \end{equation}

 が得られる。この時は全く振動せずに減衰するのみ。

 

以上のように係数の大小関係によって2パターンの違う物理的描像が得られる。係数を変化させていった結果その境目はどうなっているのかを見てみる。

 

その3:  \omega = \mu (振動と空気抵抗とが拮抗)

 この時は代数方程式の解が  \lambda = i\mu となる。これから得られる微分方程式の解は1つなので解の個数としては1コ足りてない。この足りない分は以下のように補足する。まずこれまでに得た微分方程式の解は

\begin{equation} \left( \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} t} + \mu \right) e^{-\mu t} =0 \end{equation}

のように1階微分方程式満たすもので、2コの解が別々であればこれで問題ない。今回は重解なので

\begin{equation} \left( \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} t} + \mu \right)^2 f(t) =0 \end{equation}

を満たす  f(t) を考える必要がある。これを解くために

\begin{equation} \left( \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} t} + \mu \right) f(t) = e^{-\mu t} \end{equation}

を考えればいい。確かにこの式の両辺に  \left( \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} t} + \mu \right) を作用させれば  f(t) は解の条件を満たす。方程式の形的に  f(t) = e^{-\mu t} g(t) を試してみると

\begin{align} \left( \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} t} + \mu \right) e^{-\mu t} g(t) & = -\mu e^{-\mu t} g(t) + e^{-\mu t} \frac{\mathrm{d} g(t)}{\mathrm{d} t} + \mu e^{-\mu t} g(t) \\ &= e^{-\mu t} \frac{\mathrm{d} g(t)}{\mathrm{d} t} \\ &= e^{-\mu t} \end{align}

となるので  \frac{\mathrm{d} g(t)}{\mathrm{d} t} = 1 が得られる。したがって  g(t) = B t となり、求めたかった解は

\begin{equation} f(t) = B t e^{-\mu t} \end{equation}

であることが分かる。以上をまとめると

\begin{equation} x = \left( A + B t \right) e^{-\mu t}. \end{equation}

 この解は振動はせずに指数函数  e^{-\mu t} に従って減衰する。ただし初期条件によって決まる積分定数による有限な時間  t = - \frac{A}{B} でゼロになりうる。臨界振動と言う。

調和振動子

物理の始めと言えば質点の力学、そして調和振動子、そんなイメージがあります。というわけで調和振動子の線形微分方程式を解いてみます。それだけです。

とりあえずその方程式というのは位置  x 、時間  t 、質量  m \gt 0 、バネ定数 k \gt 0 とした時

\begin{equation} m \frac{\mathrm{d}^2 x}{\mathrm{d} t^2} = - k x \end{equation}

で与えられる*1。2階線形微分方程式の形をしている。

以下解法を3種類示す。

 

解法1: 線形性を利用して解の形を  e^{i\lambda} と予め決めて解く

  x=e^{i\lambda} と解を決めて代入する。すると固有方程式

\begin{equation} \lambda^2 - \omega^2 =0 \end{equation}

が得られる。ただし  \omega = \sqrt{\frac{k}{m}} とした。この解は  \pm \omega ということが分かる。よって方程式の解は以下のようにその線型結合で書かれる。

\begin{equation} x = A e^{i \omega t} + B e^{-i \omega t}, \end{equation}

ただし  A,B は共に定数。

この解法は線形微分方程式は階数分だけ解(独立解)をもち(今回だと2階線形微分方程式なので e^{i\omega t} e^{-i \omega t} の2コ)、その線型結合ですべての解を表わせるという性質と、Fourier級数でお馴染みの  \{ e^{inx} \}_{n\in\mathbb{Z}} が完全直交基底をなしていることを利用して解いている。同じことだが  \{1, \sin n x, \cos m x\}_{n,m \in \mathbb{Z}^+} でを用いて解いても良い。両者は係数を変化させことで変換可能である。たとえ前者の関数系で展開したとしてもだいたいは初期条件(境界条件)で  \sin x あるいは  \cos x の形に持って行かせると思う。

 

解法2: 三角関数の定義を使って解く

 調和振動子で与えられた微分方程式

\begin{equation} \frac{\mathrm{d}^2 x}{\mathrm{d} t^2} = -\omega^2 x \end{equation}

である。さらに2回微分してみると

\begin{equation} \frac{\mathrm{d}^4 x}{\mathrm{d} t^4} = -\omega^2 \frac{\mathrm{d}^2 x}{\mathrm{d} t^2} = (-\omega^2)^2 x \end{equation}

となる。すなわち n を正の整数として  2n微分すると

\begin{equation} \frac{\mathrm{d}^{2n} x}{\mathrm{d} t^{2n}} = (-\omega^2)^n x \end{equation}

となる。一方で  2n-1 微分したものは

\begin{equation} \frac{\mathrm{d}^{2n-1} x}{\mathrm{d} t^{2n-1}} = (-\omega^2)^{n-1} \frac{\mathrm{d} x}{\mathrm{d} t} \end{equation}

となる。ここで  xt=0 近傍でTaylor展開を考えてみると

\begin{align} x = \sum_{k=0}^\infty \left.\frac{\mathrm{d}^k x}{\mathrm{d} t^k}\right|_{t=0} \frac{x^k}{k!} &= \sum_{k=0}^\infty \left.\frac{\mathrm{d}^{2k} x}{\mathrm{d} t^{2k}}\right|_{t=0} \frac{x^{2k}}{(2k)!} + \sum_{k=0}^\infty \left.\frac{\mathrm{d}^{2k+1} x}{\mathrm{d} t^{2k+1}}\right|_{t=0} \frac{x^{2k+1}}{(2k+1)!} \\ &= x_0 \sum_{k=0}^\infty  \frac{ (-1)^k (\omega x)^{2k}}{(2k)!} + \frac{v_0}{\omega} \sum_{k=0}^\infty  \frac{ (-1)^{k+1} (\omega x)^{2k+1}}{(2k+1)!} \\ &= x_0 \cos\omega t + \frac{v_0}{\omega} \sin\omega t \end{align}

ただし  x_0 = x|_{t=0}, v_0 = \left.\frac{\mathrm{d} x}{\mathrm{d} t}\right|_{t=0} とし、それぞれ初期位置と初期速度とを表わす。Taylor展開を奇数と偶数とに分けることで2行目で正弦函数余弦函数との定義の級数が見えることで解ける問題。

 

解法3: エネルギー積分から解く

微分方程式にまず  \frac{\mathrm{d} x}{\mathrm{d} t} を乗じてみる。すると

\begin{align} \frac{\mathrm{d} x}{\mathrm{d} t} \frac{\mathrm{d}^2 x}{\mathrm{d} t^2} &= - \omega^2 x \frac{\mathrm{d} x}{\mathrm{d} t} \\ \frac{1}{2} \frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} t} \left( \frac{\mathrm{d} x}{\mathrm{d} t} \right)^2 &= - \omega^2 \frac{\mathrm{d} x^2}{\mathrm{d} t}\end{align}

より

\begin{equation} \frac{1}{2}\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} t} \left[ \left(\frac{\mathrm{d} x}{\mathrm{d} t}\right)^2 + \omega^2 x^2 \right] = 0 \end{equation}

が得られる。この積分を実行すると得られるものがエネルギーなのでエネルギー積分と言われてると思う。それを  E \geq 0 と置いておく。

\begin{equation} \frac{1}{2}\left(\frac{\mathrm{d} x}{\mathrm{d} t}\right)^2 + \frac{\omega^2}{2} x^2 = E .\end{equation}

 この式を \frac{\mathrm{d} x}{\mathrm{d} t} について解くと

\begin{equation} \frac{\mathrm{d} x}{\mathrm{d} t} = \pm \sqrt{ 2E - \omega^2 x^2} \end{equation}

となる。これを変数分離してやると

\begin{equation} \frac{\mathrm{d} x}{\sqrt{2E - \omega^2 x^2}} = \pm \mathrm{d} t \end{equation}

となる。両辺を積分してやると

\begin{equation} \int \frac{\mathrm{d} x}{\sqrt{2E - \omega^2 x^2}} = \pm t + \alpha, \end{equation}

 とりあえず右辺は簡単に積分できたが左辺は保留しておく。ここで余弦函数逆関数  \cos^{-1} a x 微分を考えてみる。これは  y=\cos^{-1} ax とおくと以下のように実行される。

\begin{align} ax &= \cos y \\ a\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} x} x &= \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} x}\cos y \\ a &= -\sin y \frac{\mathrm{d} y}{\mathrm{d} x} \end{align}

より

\begin{align} \frac{\mathrm{d} y}{\mathrm{d} x} = -\frac{a}{\sin y} = -\frac{a}{\sqrt{1-\cos^2 y}} = -\frac{a}{\sqrt{1-a^2x^2}}, \end{align}

すなわち

\begin{equation} \frac{\mathrm{d} \cos^{-1} ax}{\mathrm{d} x} = -\frac{a}{\sqrt{1-a^2x^2}} .\end{equation}

 これより先ほどの積分

\begin{align} \int \frac{\mathrm{d} x}{\sqrt{2E - \omega^2 x^2}} = \frac{-1}{\omega} \int \frac{-\left(\frac{\omega}{\sqrt{2E}}\right) \mathrm{d} x}{\sqrt{1 - \left(\frac{\omega}{\sqrt{2E}}\right)^2 x^2}} = -\frac{\cos^{-1}\frac{\omega}{\sqrt{2E}} x}{\omega}  \end{align}

と解けることが分かる。したがって  x

\begin{align} x = \frac{\sqrt{2E}}{\omega} \cos\left( \omega t + \tilde{\alpha} \right) \qquad (\tilde{\alpha} = \pm \omega \alpha ) \end{align}

のように求まる。今回は初期条件なり積分区間を決めずにふわっとした積分をしてしまっているがちゃんと問題の条件に即した範囲で積分すること。参考までに原島さんの力学はこの導出方法が書かれている。

 

力学 1 質点・剛体の力学

力学 1 質点・剛体の力学

 

 

以上の方法はある種正攻法であって、解を具体的に知らなくても解ける方法である。一方で既に解を知っているなら積分定数を2コ含む形で三角関数を代入すれば良いというのもある。たとえば  A\sin(\omega t + \alpha) or  A\cos(\omega t + \alpha) 、あるいは  A \sin\omega t + B \cos\omega t 。これだと必要性が分からないという意味で不十分かもしれないが結果的には問題がないということになる。一応ちゃんと導出した経験があるならこれでいいじゃん、という見方もあるかもしれない。

*1:バネとは限らないのでバネ定数と書いてしまうのに迷いがあったが、単に係数というのなんだかな、ということで言葉の座り的にバネ定数と書いておく。位置に比例する力と言っておけば係数と言っても良いとも思った。

演算子のゼータ函数

多重対数函数の話の中でHurwitzのゼータ函数  \zeta(z,a) の紹介(というかWikipediaのリンクを貼っただけ)をした。ゼータ函数と言ってもいろいろな表示方法があったり、バリエーションがあったりする(というのをわりと最近知った)。その中に演算子のゼータ函数というのもある。ということでこれまで同様まずはWikipediaのリンクを貼る。ゼータ函数 (作用素) - Wikipedia(Zeta function (operator) - Wikipedia)。今回は日英ともに内容はほぼ変わらない。

 

ゼータ函数というと普通

\begin{align} \zeta(s) = \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^s} \end{align}

を思い出すと思う。それに対して演算子  \mathcal{O} のゼータ函数というのはリンク先の式を見ると

\begin{align} \zeta_\mathcal{O}(s) = \mathrm{tr}\, \mathcal{O}^{-s} \end{align}

と書かれている。トレースで書いたままだとイメージが持ちづらいときは、例えば固有値で展開すると対応が見やすくなると思う。つまり演算子  \mathcal{O}固有値の集合が  \{\lambda_{n,k}\} とすると

\begin{align} \zeta_\mathcal{O}(s)=\sum_{n,k} \frac{1}{\lambda_{n,k}^s} \end{align}

と書き換えられる。この和は固有値を例えば値の小さい順に番号 n を振って、縮退度  k も込みで順に並べるものとする。ただし自分も詳しいことはよくわからないのでイメージしてるのは離散的な固有値を持つときだけである。この形で書いていると元のゼータ函数の正の整数が固有値を指定する正の整数に置き換えられるものだと見ることができる。

またWikipediaで興味深い事が書かれていて、それはこの演算子のゼータ函数汎関数行列式を定義することに使われる、ということである。場の量子論を扱ってると行列式  \mathrm{det} の中に微分演算子などが入ってるものが出てきたりする。そのとき使われるのがゼータ函数微分された量である。

\begin{align} \left. \frac{\mathrm{d} \zeta_\mathcal{O} (s)}{\mathrm{d} s}\right|_{s=0} = - \left. \mathrm{tr}\, \mathcal{O}^{-s} \ln \mathcal{O}\right|_{s=0} = - \mathrm{tr}\,\ln \mathcal{O} = - \ln \mathrm{det} \mathcal{O}. \end{align}

 

 演算子のゼータ函数のガンマ函数を用いた別の表示も紹介しておく。それは

\begin{align} \zeta_\mathcal{O} (s) = \frac{1}{\Gamma(s)} \mathrm{tr} \int_0^\infty \mathrm{d} t \, t^{s-1} e^{-t \mathcal{O}} \end{align}

という表示である。積分変数を  t = \mathcal{O}^{-1} x とすると形式的に最初に紹介した形に戻る。

\begin{align} \zeta_\mathcal{O} (s)  = \frac{1}{\Gamma(s)} \mathrm{tr} \int_0^\infty \mathcal{O}^{-1}\mathrm{d} x\,  \mathcal{O}^{1-s} x^{s-1} e^{- x} =  \mathrm{tr}\, \mathcal{O}^{-s}. \end{align}

ここまで述べてなかったがガンマ函数というのは

\begin{align} \Gamma(x) = \int_0^\infty \mathrm{d} t \, t^{x-1} e^{-t}  \end{align}

で定義される函数である。こちらもWikipediaのリンクガンマ関数 - Wikipedia(Gamma function - Wikipedia)である。

述べる順序が逆かもしれないが、普通のゼータ函数

\begin{align} \zeta(s) = \frac{1}{\Gamma(s)} \sum_{n=1}^\infty \int_0^\infty \mathrm{d}t\, t^{s-1} e^{-nt} \end{align}

と書ける。

多重対数函数その2

前回は単に多重対数の定義を書いただけだった。そんなに多重対数はメジャーじゃないっぽいのでリンク貼っての紹介だけでもいいと思う(Wikipediaを参考にすれば十分に計算できると思う)が、今回はもうちょっと他の函数との関係を紹介しておく。

これまたWikipediaに載ってる内容ではあるが多重対数  \mathrm{Li}_{s}(z) とゼータ函数、そしてHurwitzのゼータ函数  \zeta(s,a) との関係を紹介する。リンクはフルヴィッツのゼータ函数 - Wikipedia(Hurwitz zeta function - Wikipedia)である。

 

まずは多重対数の  z=1 を見てみると

\begin{align} \mathrm{Li}_s(1) = 1 + \frac{1}{2^s} + \frac{1}{3^s} + \frac{1}{4^s} + \cdots  &= \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^s} \\ &= \zeta(s) \end{align}

となっており、多重対数はゼータ函数を含む形になっていることが分かる。

 

 次に名前があがったHurwitzのゼータ函数を紹介する。定義は次に示されるものである。

\begin{align} \zeta(s,a) = \sum_{n=0}^\infty \frac{1}{(n + a)^s} \end{align}

よく見るゼータ函数との違いは和が  n=0 から始まっており各項に  a のシフトが導入されてることだ。したがって  \zeta(s,1) = \zeta(s) という関係になっている。

このHurwitzのゼータ函数との関係は

\begin{align} \mathrm{Li}_s(z) + e^{\pi is} \mathrm{Li}_s(1/z) = \frac{e^{\frac{\pi i s}{2}} (2\pi)^s}{\Gamma(s)} \zeta\left(1-s, \frac{\ln z}{2\pi i} \right), \end{align}

 ただし  \mathrm{Re}( s )\lt 0 。無条件で書き直せるものではないっぽいです。

多重対数函数の参考文献として『Polylogarighms and Associated Functions』(Leonard Lewin)も挙げておきます。中古しか無いし値段がとんでもなく高騰してますが一応リンクも貼っておきます。

 

Polylogarithms and Associated Functions

Polylogarithms and Associated Functions

 

 

多重対数函数その1

最近多重対数函数というのに触れる機会があったので記録しておく。

 

日本のWkipediaだと多重対数関数 - Wikipedia、英語だとPolylogarithm - Wikipedia。充実度だと圧倒的に英語のほうが上なのはままあり今回も例にもれずと言ったところ。

 

記事にある通り、多重対数函数というのは複素数  z \in \mathbb{C} に対して

\begin{align} \mathrm{Li}_s(z) &= z + \frac{z^2}{2^s} + \frac{z^3}{3^s} + \frac{z^3}{3^s} + \cdots = \sum_{n=1}^{\infty} \frac{z^n}{n^s} \end{align}

 で定義される。 s=1 のときは

\begin{align} \mathrm{Li}_1(z) = \sum_{n=1}^{\infty} \frac{z^n}{n} = -\ln (1-z) \end{align}

のように普通の対数函数になる。  z=0 まわりでTaylor展開すればわかる。また  z=1 で発散してしまうので定義域は  |z| \lt 1 であることが分かる。  z=1 を避けさえすれば解析接続でその範囲外の値が求められる。

多重対数函数微分すると

\begin{align} \frac{\mathrm{d} \mathrm{Li}_{s+1} (z)}{\mathrm{d} z} = \sum_{n=1}^{\infty} \frac{ n z^{n-1}}{n^{s+1}} = \frac{1}{z} \sum_{n=1}^{\infty} \frac{ z^n}{n^s} = \frac{1}{z} \mathrm{Li}_{s} (z) \end{align}

が得られる。また

\begin{align} \frac{\mathrm{d} \mathrm{Li}_{s+1} (e^x)}{\mathrm{d} x} = \sum_{n=1}^{\infty} \frac{ n  e^{nz}}{n^{s+1}} =  \mathrm{Li}_{s} (e^x) \end{align}

も得られる。ふたつの式は  x=\ln z でつながる。